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Degustation gratuite ![5]
「月刊Online Today Japan」(ニフティ発行)1994年7月号掲載
江下雅之
先日、ワインで有名なブルゴーニュまで遠足してきた。ニフティのメンバーふたり、ぼくとカミさんをあわせて、四人のささやかな《ミニオフ》だった。
われわれはまず、ブルゴーニュのお隣り、リヨンに向かった。
パリ・リヨン間は、新幹線(TGV)を利用した。TGVは全席指定席なので、あらかじめ予約が必要だ。もっとも、たいていは出発直前でも予約できる。
この日もいきなり駅まで行った。一般の窓口はどこも三、四人の列ができていた。フランス人はやたら注文が多いので、一人に五分はかかると考えたほうがいい。
次のTGVの出発は三十分後。躊躇なく自動発券機に向かった。
フランス国鉄の自動発券機は、使い勝手があまりよくない。外国人にとってはなおさらだ。ただし、クレジット・カードが使えるし、窓口のヒアリングですったもんだするよりも、かなり気楽なことは確かだ。
目的地のリヨンには、一眠りもしないうちに到着した。ここで、在リヨンのメンバーと待ち合わせていた。
ひとつ、ちょっとしたミスがあった。
TGVのリヨン到着駅が二つあったのだ。ぼくは、Part Dieu駅しか知らなかった。
前日、電話で駅の名前を聞いたとき、確か待ち合わせた駅は「p」ではじまったと思った。が、もう一方はPerrache駅——やはり「p」で始まっていた。
Part Dieu駅で二十分ほど待ったが、「待ち人きたらず」だった。相手は時間に正確なかただった。とりあえず、Perrache 駅まで移動することに決めた。
時刻表を見ると、Perrache行きが三分後に出発する。窓口をみると、どこも数人の列ができていた。自動発券機に向かう。
ほんのひと駅分の切符なのに、パリまで行く長距離切符と同じ操作が必要だった。
行き先を選ぶため、キーボードを表示させ、頭の文字を入力する。まるで日本の銀行オンライン・システムで振り込み手続きをするようなものだ。
それから「片道」「二等車両」「割引なし」などをひとつづつ選ぶ。省略すると、長いエラーメッセージがあらわれる。
ようやく二枚分かったときには、すでに電車は発車したあとだった。
結局、その二十分後の電車で Perrache 駅に向かった。待合い室に向かうと、ほどなく「待ち人」と出会うことができた。
しょっぱなにこんなトラブルはあったが、リヨン、そして翌日のブルゴーニュの小旅行は快適だった。
同行者の一人は、ロンドン在住だった。そのひととのみ、ブルゴーニュのTGV出発駅であるディジョンでお別れした。
翌日、そのひとから電子メールが届いた。ディジョンからリヨンに戻り、そこからロンドンに飛ぶ予定だった。ところ、なぜかTGVはパリに向かった。列車の行く先表示も切符もリヨン行きだったのに……という内容だった。
不思議なはなしだなと思ったが、はたと気がついた。
そもそもディジョン・リヨン間のTGVなどなかった。パリに向かうしかないのだ。
なぜリヨン行きだと思ったか?
ややこしい話しだが、ディジョン方面からのTGVが到着するパリのターミナルは、「リヨン駅」というのだ。 リヨン行きだと思っていた列車は、最初からパリ行きだったわけだ。
多分、窓口では「TGVでリヨンまで一枚」というように頼んだのだろう。窓口のひとは、当然のように「パリのリヨン行き」切符を渡したことだろう。
自動発券機を使っていたら、リヨン経由のリヨン行き切符になったかもしれない。