問い合わせ先

ご意見・ご感想あるいはご質問がある場合は、本サイトの「Centre」コーナーにてコメントとしてお寄せください(バナーの「centre」タブをクリック)。コメントの公開を希望されない方は、その旨、コメント内のわかりやすい場所に明記しておいてください。

掲載原稿について
ここに掲載した原稿は、すべて雑誌・ムック他に公表したものです。原稿の著作権は江下雅之が保有します。無断転載は固くお断りいたします。
なお、当サイトに公開しているテキストは、すべて校正作業が入る以前のものをベースにしております。したがいまして、実際に雑誌やムックなどに掲載された文面とは、一部異なる箇所があります。

サイト内検索


カテゴリー(archives)


多面鏡[1998年9月22日執筆]
「France News Digest」(France News Digest/発行)
江下雅之

ストの読み方

 世論調査機関CSAの事前調査によれば、98年9月末にリセ教師が予定しているストを支持する人は、回答者の45パーセントだった。不支持または反感を抱いた者が24パーセント。この結果に対し、週刊誌L'Evenement du Jeudi誌は「(支持は)わずか45パーセントにすぎない」という評価を下している。
 たしかにこの支持率、過去のどのストに比べても低い。97年11月のトラック運転手のストは、80パーセント近い人が支持していた。フランス全土が麻痺した95年10月のゼネストでさえ、62パーセントの回答者が「支持または理解」していたのである。
 しかし、45パーセントという数字でも、日本人的感覚からすれば随分と高い。そもそも日本社会なら、ストそのものが社会の迷惑であり、自分勝手な行為を考える人が多いのではないか。
 たしかにストが実施されれば、多くの人が不便を強いられる。この状況は、日本だろうがフランスだろうがかわりはない。ストの頻発するパリでも、メトロが突然止まれば車内のあちこちから「Merde !」と聞こえてくるものだ。
 ここで一つ考えないといけないことは、誰の迷惑にもならないストなど、ストとしての意味をなさない点である。社会の迷惑だからこそ、争議相手へのプレッシャーとして機能するのである。
 迷惑への抗議の矛先が、日本ではストを打つ当事者に向かい、フランスでは経営者の方に向かう。圧倒的多数のフランス人にとって、ストとは「雇用されている」立場にある者共通の関心事である。「おなじ利用者・消費者」という前提に拠って立つ日本人的感覚とのギャップは、この点にこそあるのだろう。前述の「45パーセントにすぎない」という評価は、件のストに対し、フランス人から「同じ立場の出来事」とみなされていないことを示している。


Copyright (C) Masayuki ESHITA

最近の登録原稿(RSS)

掲載月別アーカイブス