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連載コラム 多面鏡:1999年6月(2)[1999年6月24日執筆]
「France News Digest」(France News Digest/発行)
江下雅之
フランスの書店には、新刊書とともに古書を販売している店がある。パリのジベール・ジョンヌは代表的で、九月は学生たちが持ち込む本を買い取る繁忙期でもある。この時期、ジベールに本を買いに行くと、書店員からいきなり「本をお売りですか?」と尋ねられるだろう。店には本を売りに来る学生と安く手に入れようとする新入生の両方が集まるため、中は大混雑するが、それ以上に込み合うのが店頭だ。テキストを買いに来た新入生に、直接自分の本を売ろうとする学生たちがそこに集まるのである。ジベール前にあるサン・ミッシェル広場など、この時期には即席の青空古本市といった状況だ。
本だけでなく、七月から九月は引越家具の不要品処分のアノンスがスーパーやショッピングセンターの掲示板に並ぶ。日本書店や日本食品店でも、その時期は帰国売りの掲示が大量に張り出されるものだ。日本でも学生街の古書店では、辞書・テキスト類は大量に並ぶが、学生たちがせっせと古本を売りさばく姿はあまり見かけない。引越家具にしたって、フランスではごく普通に見かける不要品処分の販売は、ごく一部の人たちが例外的に行っているにすぎない。個人間の中古品売買といった点では、フランスの方がはるかに盛んだ。
ところで、粗大ゴミの取扱、古紙や瓶などのリサイクル率を統計から見ると、フランスはけっして高い数字を示しているわけではない。古紙などは日本の方がはるかに回収が進んでいる。パリ市内での雑誌類の分別回収も、始まったばかりといっていい。こうした点はずいぶんとルーズに感じるかもしれない。ところが、先に述べたように、本だろうが家具だろうが、フランスでは使える中古品は個人間で徹底的に使いまわしている。ゴミ処理では日本の方が案外と進んでいる面があっても、フランスには、使えるかぎりはとことん使い込む生活習慣が定着している。数字に見える回収率よりも、ゴミを出さないこういう姿勢こそが、本当は重要なのであろう。