2013年度の問題分析ゼミ火曜グループ第10回の概要です。
日時:2013年6月18日(火)16:20~20:30
会場:5限 明治大学リバティタワー10階1102教室 6限1101教室
参加者:15名 江下、高橋、後藤班(5)、山田班(5)、橘班(4)
欠席者:1名
1.はじめに
・インカレ合宿の役職決め
会計 :山田
レク係 :伊藤 安藤
記録 :権藤
スポーツ :松村 岡部
飲み会準備:姫野 秋楽
バス係点呼:山口
責任者補佐:橘
掃除監督 :佐久間
2.輪読
(1)山田グループ
『中高年インターネット利用者の社会関係とQOL』(2008/森やす子)
発表者:伊藤
【概要】
多様なメディア利用の実態がある中高年層におけるQOLとメディアの利用の関係性を調査したもの。調査の結果メディア自体がQOLを構成する要素である満足度に直接の影響を与えることはなかったが、メディアによる連絡の頻度が満足度に影響しているということがわかった。また、中高年期においては人間関係が職縁、社縁から地縁へと移行していくという動きもありそれもQOLと関係しているといえる。今後は調査対象のネットワークをより明確にした分析が必要である。
(2)橘グループ
『友人選別的利他戦略による平和状態の進化シュミレージョン』(2005/中井豊、武藤正義)
発表者:勝又
【概要】
なぜ人間は自分の利益だけにとらわれないのかという研究。友か敵かの判断方法として私意識我々意識を合わせ、計8つの戦略が存在している。その中で我々意識のしっぺ返し戦略をもつ人が登場し、友好の連鎖が発生。さらに互いを我々とみなす内集団が成長し、共同体意識をもち、平和状態がうまれる。私意識だけの戦略では闘争状態を生むが我々という共同意識をもつことで、平和状態が生成される。
(3)後藤班
『2ちゃんねるが盛り上がるダイナミズム』(2004/松村真宏、三浦麻子)
発表者:権藤
【概要】
2ちゃんねるにおけるコンピューターコミュニケーションは意味のないような言葉や記号に多くのユーザが集まる。その意味のないようなものに意味を見出すところに2ちゃんねる独自の文化がある。これまでのネットにおける匿名性とはハンドルネームを用いたところにあったが2ちゃんねるにおける「名無し」には無名的な匿名性をもっていた。
さらに2ちゃんねるの特徴として議論発散傾向と議論深化傾向の共存等がある。定型的固有表現と名無しがうまく利用されているという独自の文化の中で独自のコミュニケーションが成立している。
2.ブックレビュー
・佐久間
『新聞社』(河内孝 新潮新書 2007)
新聞の部数至上主義は破綻し、記事の質が重視されるようになった。朝日、読売に次ぐ新たな第三勢力としての新聞の登場が必要。顧客の読みたいと思える記事を書くことに努めるべき。
・後藤
『新聞記者という仕事』(柴田鉄治 集英社新書 2003)
ジャーナリズムの原点は権力の監視にある。読者の空洞化を防ぐには誤報を防ぐ努力、検証、報道の中立性が不可欠である。
・松村
『ルポ 賃金差別』 (竹信三恵子 ちくま新書 2012)
図書館で働く非正規職員の例に賃金差別を語る。身分的カテゴリにあてはめ、評価し賃金を決められてしまっている。このようなことは日本では当たり前になっている。職務評価の公正な判断ができるシステムが重要である。
・姫野
『新聞再生』(畑中哲雄 平凡社新書 2007)
新聞の周縁にある人々を検証していくことで、現代における新聞を再構築し新聞再生のキーとする。地方紙の例から市民は新聞にとっての顧客ではなく主人公であるべき。市民の新聞への積極参加が新聞再生につながる。
・山口
『全証言 東芝クレーマー事件』(前屋毅 小学館文庫 1999)
東芝クレーマー事件の内容を両者へのインタビューから記載したもの。事件が大きくなったことには両者が主張をまげなかったこと、ネットの影響力にあったといえる。
・武井
『暴走する地方自治』(田村秀 ちくま新書 2012)
今日の地方の首長は改革という手段が目的となってしまっていることが問題になっている。それは国政の混迷が原因といえる。住民による民主的な自治が求められている。
・山田
『18分集中法』(菅野仁 ちくま新書 2012)
この方法は義務的なタスクをこなす際に有効である。何もしていない状態からまず18分やってみるということが楽しい時間を過ごす方法につながる
・安藤
『セックスメディア30年史』(萩上チキ ちくま新書 2011)
セックスメディアは人々の性欲に対応して進化した。ネットでの情報開示がうまれたことで情報の非対称性をかえた。これには政治的、文化的な要因がかかわっており、これからもセックスメディアは変容していくだろう。
・岡部
『企業ドメインの戦略論』(榊原清則 中公新書 1992)
ドメインは企業の戦略領域としての側面をもつ。わかりにくいドメインは客を混乱させるため素朴でわかりやすいドメインが有効である。対顧客だけではなく組織としてもドメインは重要である。
・橘
『ディタルネイティブの時代』(木村忠正 平凡社新書 2012)
デジタルネイティブ達は変化するメディアの技術に適応してきた。彼らの特徴として空気を読む力、テンションの共有、コネクションの拡大があげられる。新しいコミュニケーションの形を生み出していく彼らに対し、最適なネットワーク環境の提供が必要である。
・秋楽
『報道被害』(2007 岩波新書 梓沢和幸)
マスメディアは表現の自由をもっているが、それによって被害者をだしてはならない。報道被害はマスコミの競争体制や警察による情報の発表の少なさからくる過度の取材が原因である。記者が人権意識をもつことが最も重要な改善策といえる。
【補足】
・ネットワーク利用歴20年以上の人の特徴として常に新しいツールにまっさきにとびつく傾向があり、3分の2以上が自分のドメインをもっている。中高年者のネットの利用は多様であるといえるだろう。
・ビックデザイアという風俗情報サイトの誕生はこれまで一方通行型だった情報が双方向のものになった。これは2ちゃんねる以前のBBSで匿名性の強みを用いた情報交換である。
・メディアスクラム(メディアがスクラムを組んで個人を集中攻撃すること)の有名な事例として松本サリン事件、みうらかずよし事件の報道があげられる。このみうらかずよし事件の裁判はすべて成功していたため、これをきっかけにメディアは委縮しスキャンダル報道の大きな転機となる事件であった。また近年出版社ではなくジャーナリスト本人を攻撃する傾向があり、企業と違い個人に対する負担は非常に大きいため、ジャーナリストの委縮がみられている。
文担当:姫野
文編集:岡部
以上