2018年度の問題分析ゼミ第4回の議事録です。
日時:2018年5月8日(火)
会場:リバティータワー13階 1131教室
参加者:23名
江下、高橋、山本G(4)、星野G(6)、中島G(6)、土屋G(5)
欠席者:1名
1. 連絡事項
インカレ夏合宿の研究テーマについて
2. グループ発表
(1)星野G
・発表者:美濃和、渡邊、栗橋
・課題本:『音響メディア史』(谷口文和・中川克志・福田祐大 著、ナカニシヤ出版、2015)
・発表範囲:第10章「カセット・テープと新たな音楽消費」、第11章「デジタル時代の到来」、第12章「解き放たれた音」
[概要]
第10章
カセット・テープはその録音可能性と可搬性から、新たな音楽消費の形態を生み出した。録音可能性によって、生録やエアチェックが行われるようになり、またレンタル文化も生み出された。音楽を持ち出せるという可搬性は、ヘッドホンやイヤホンによる視聴を普及させた。カセット・テープを用いた録音や視聴は、商業用音楽を消費者が自分のものにする活動である。
第11章
デジタル音響技術の実用化は、CDの誕生をもたらし、音楽をデータとして流通させた。1979年にソニー、フィリップス社が統一規格としてCDを採用し、音のデジタル環境が浸透していく。さらに、音楽がデジタル通信によって流通されることで、通信カラオケサービスや「着メロ」のデータ配信が開始された。技術発展や需要の変化によって、CDは「データの入れ物」と化し、その全盛期は、音のデジタル化の過渡期である。
第12章
1990年代以降、音楽は物理的制約から解放され、デジタル情報として流通するようになった。音楽の商品としての性が変わると、DAPや音楽配信サービスが普及した。日本の音楽配信サービスは、携帯電話のデータ通信機能を利用したという特徴がある。90年代後半以降、レコード産業の売上金額が減少し音楽は危機を迎え、今日の新しい音楽文化では、音楽はいつでも無料で消費できるものとなった。
(2) 山本G
・発表者:山本、萩田
・課題本:『映像文化の社会学』(長谷正人 著、有斐闍、2016)
・発表範囲:第11章「人類学における映像文化」、第12章「スターという映像文化」
第11章
人類学において、映像は文化を記録するために用いられた。当初、映像は文字の補助手段でしかなかったが、1975年の「映像人類学に関する決議」によって映像研究が推進された。しかし1980年代には、それまでの人類学の在り方を批判する「批判的人類学」が起こる。そこで民族誌の新たな方法として、人類学は芸術へと接近した。映像と人類学の関係は、近代科学と結びつきながら変化していく。
第12章
スターとファンの関係性は、ファンが一方的に見る非対称なものである。憧れを獲得したスターは、人々の模倣の対象となった。また、テレビは親しみが求められるアイドルを産み出し、1980年代には業界人のような目でアイドルを見るようになった。現在、ファンはアイドルに対等な関係を求め、SNSの発展は誰もがアイドルの様になることを可能にした。しかし、アイドルへの崇拝の感覚は消失していない。
(3) 中島グループ
・発表者 : 幸直美
・課題本 : 『エジソンと映画の時代』(チャールズ・マッサー 著、森話社、2015)
・発表範囲 : 第4章「ニッケルオデオン時代の幕開け」
[概要]
ニッケルオデオンの普及により、予備知識のある観客に依存した非直線的な映画から、自己完結した直線的で中間字幕のある、よりわかりやすい、純粋な商品へと変化した。
(4) 土屋グループ
・発表者 : 篠崎、太田、興梠
・課題本 : 『メディア技術史 メディア社会の系譜と行方』(飯田豊 編著、北樹出版、2017)
・発表範囲 : 第5章「声を伝える、技術を楽しむ」、第7章「ローカルメディアの技術変容」、第8章「文化としてのコンピュータ」
[概要]
第5章
役割が確定する前に技術として誕生していたり、構想されていたメディアのありようや、過去と現在で違ったメディアの楽しみ方を見せることを「可能的様態」といい、メディアは時代によって多様な楽しみ方を人々に与えてきた。この章では電話とラジオの2つのメディアの歴史を見ていく。
第7章
ミニFMが生まれたことをきっかけに、情報の送り手と受け手の関係だけでなく、受け手同士の関係も大きく変化してきたローカルメディアだが、インターネット社会の今、ローカルメディアとしての特性をいかにインターネット上に移行していくかが課題となっている。
第8章
コンピュータ史を文化の視点から見ると、コンピュータがユーザーの活用方法や社会への普及の仕方によって柔軟性を帯びたことが分かる。しかしその柔軟性ゆえに、私たちの生活空間に深く侵入しているコンピュータの安全で透明性のある利用とサービス提供が求められている。
3.反省
全体的にグループ発表後の質疑応答がまだ充実していないように思える。
各自の研究したい分野についての質問、少しでも気になった点についてその場で消化できるのが望ましい。
文・編集担当 : 山本・太田