2022年度問題分析ゼミ第17回の議事録です。
日時:2022年10月11日(火)15:20~17:30
会場:明治大学リバティタワー14階1141教室
参加者:16名
江下、高橋、米田G(4名)、山岡G(3名)、村川G(2名)、三浦G(5名)
欠席者:6名(1名はオンラインで出席)
遅刻者:0名
早退者:1名
1.グループ発表
(1)村川グループ
・発表者:川添
・課題本:林香里『メディア不信 何が問われているのか』(2017)
・発表範囲:第5章 ソーシャル・メディアの台頭
[概要】
ソーシャルメディアの問題に関して、サンスティン、パリサー、ボツコフスキの3人によって検討が行われた。ニュースとソーシャルメディアの関係性について、3人の指摘から、一見技術的なサービスが、受け手の「ニュース」のイメージ、期待、価値基準に変更をもたらし、ニュース内容そのものにも変化を加える可能性があることがわかった。ここから技術的な革新」がジャーナリズム機能の衰弱、公共の言論空間の亀裂などを招くことが伺え、集団分極化が進んでいるアメリカでは顕著にその傾向が表れているといえる。
[質疑応答]
質問1:ファクトチェック機能の限界についてもう一度聞きたい。
回答:機能の限界には3つの要因がある。
1.ネット空間を友人や家族のように信頼のおける空間だと捉えているために嘘が広まる。
2.より絆を深めようと共感する話ばかりして、ニュースの選択的接触をしがちであるために、審議の判断ができなくなる。
3.ソーシャルメディアを提供する会社が情報開示をしないために、第三者が検証や検索や提案もできない。
質問2:感情の感染について相手の感情に無意識のうちに影響を与えるとあったが、それは正負どちらの感情なのかといった、具体的情報は記載されていなかったのか。
回答:正負どちらの感情も、対面的言葉のやり取りのようにネット上でも投稿を通して感情が伝わることが説明されている。
(2)山岡グループ
・発表者:山岡、山崎
・課題本:松田美佐『うわさとは何か』(2014)
・発表範囲:第6章 ネット社会のうわさ―2010年代の光景
[概要]
第6章―1
ケータイの普及とともに利用率が上がってきたメールは、うわさとどういった関連性があるのか考察していく。ここではメールが持つ非同期性と記録性の2つの機能が重要となる。その機能を踏まえると、メールで広がるうわさについて「気軽なうわさ」「記録性とうわさ」「メディア・ミックス化するうわさ」の3つの角度から考えることが出来る。
第6章―2.3
インターネットとうわさの関係性について、インターネット以前では不特定多数に向けた情報発信はマスメディアが独占していて、個人がマスメディアの情報発信過程に参加することは困難だった。情報発信のハードルをインターネットの誕生が大きく下げたことがここからいえる。
【質疑応答】
質問1:「そのチェックを通過しない限り」とはどういったチェックを指すのか。
回答:受け手側の個人的なチェックを指していると考えられる。
質問2:記録性とうわさの関連性について、善意によるチェーンメールが目立つ傾向にあるとあったが、具体的な例はあるのか。
回答:血液不足のために献血のキャンペーンを呼びかけるチェーンメールについて記載されていた。
(3)米田グループ
発表者:斎藤(佳)
課題本:橋本良明『メディアと日本人―変わりゆく日常』(2011)
発表範囲:第4章 ネット世代のメンタリティー―ケータイ+ネットの魅力
[概要]
インターネット関連の起業家に多い76世代と物心ついた時から周囲にコンピューターやネットが存在し、デジタルテクノロジーに浸って成長してきた世代であるデジタルネイティブについて、彼らの心理的傾向の相違点や共通点を分析するとともに、若者がなぜネットに惹かれて、なぜ依存をするのか検討する。
[質疑応答]
質問1:多くの若者の関心は政治ではなく自分とその周辺に集まっているとあったが、それはなぜか。昔の若者との比較がここにはあるのか。
回答:昔の若者と比べてより先行きが見えない、今の日本の将来が見えないという理由からそういった傾向が高まったといえる。
(4)三浦グループ
発表者:澤村、ハン
課題本:佐藤卓己『流言のメディア史』(2019)
発表範囲:第7章 戦後の半体制メディア、第8章 汚染情報のフレーミング、第9章 情報過剰社会の歴史改変
[概要]
第7章
戦後日本で見られた「もう一つのジャーナリズム」として、カストリ雑誌の中の共産党系出版社による暴露雑誌として売り出された「真相」を中心に戦後のメディアの流言を見る。
第8章
水爆実験による健康被害に関するフレーミングはメディア流言によって強められ、「風評被害」のフレームが形成された。それにより、魚介類全般が売れなくなり大きな損害が生まれてしまった。厚生、農林両省によって声明を出すも国民の不安は拭えず、新聞やNHKのラジオ放送、ビラや都電・都バスの広告などで魚の安全性を宣伝するまでに至った。
第9章
弾丸効果パラグラムにおいて、「絶対の宣伝」と呼ばれたナチ・プロバガンダの評価が大きく変わって、ナチ宣伝も限定効果論として説明されるようになった。ナチ宣伝はドイツ国民の先入観を顕在化させ、補強する効果はあったが、その選好を反転させるまでの即効力は有していなかった。ヒトラーは平和主義者を戦争支持者に変容することが困難であったために、ゲシュタボや強制収容所が必要となった。宣伝を先導した彼を絶対悪の象徴として神話化することで、現実政治を測る物差しとなっていった。
【質疑応答】
なし
2.反省点
前半はいつも以上に質問はあったが、後半の発表になるにつれて質問が減っていってしまった。
作成:山岡
編集:三浦