info:2023年度問題分析ゼミ(江下ゼミ14期)の概要

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個別ガイダンスやガイダンス動画では説明しきれないこともありますので、概要を紹介しておきます。ゼミ・シラバスとあわせて参考にしてください。なお、概要といってもわりと長文です......

江下のtwitterアカウントもあります。質問があれば気軽に尋ねてみてください。

ゼミの目標は「30歳に向けた土台づくり」です。

これからみなさんがどのようなキャリアを歩むにせよ、若いうちは「パシリ」です。プロジェクトの運営をまかされ、自分で予算を管理し、人を使って仕事をするようになるのは、速くても30歳前後でしょう。そのぐらいの経験値は必要なのです。そのときまでに土台をしっかり築いておかないと満足な仕事はできません。仕事のよろこびも達成感もえられません。

社会人の多くは30歳前後になると「学生時代にもっと勉強しておけばよかった」と悔やみます。社会人になってから日々学ばねばならないことは学生時代よりもはるかに多いからです。そして、社会人になってから「学生時代にもっと勉強を」と思うことのほとんどは一般教養と基礎的な専門知識に属するものです。考えてみれば当然で、実社会では日常的に現実の仕事に取り組むのですから、学生時代に座学で学ぶ「実務的知識」などは一ヶ月程度で消化してしまうでしょう。だからこそ、物事を考えるための基礎力の不足を痛感するのです。

「30歳に向けた土台づくり」のためには「急がば回れ」です。「すぐに役立つ」ことを学んでも基礎力はつきません。そもそも創造とは、これまで役に立たなかった」ことに新たな価値を付与することに他なりません。時間に余裕のある学生時代にこそ、「すぐには役に立ちそうにない」ことに注力すべきなのです。

そうした観点から、当ゼミではメディアに関して考察するための基本中の基本であるメディア史の知識を習得するとともに、リサーチの実務を重視します。調べるべき資料を調べ、数値データを整理し、基本文献や論文を通じて学んだ原理や法則を用い、さまざまな情報を関連づける。そして「現場」の観察を通じ、身近な現象からさまざまな「徴候」を読み取り、分析をもとにして提案に結びつける。仕事をするうえで、ごくあたりまえのことを地道に積み重ねようと考えています。

大切なことは、リサーチを通じ、ぐぐっても出てこないオリジナルの知識を一つでも獲得することです。ネットで簡単に検索できてしまう程度の知見に、たいした付加価値はありません。本に載っていることも、すでに「周知」の事柄が大半です。もちろん公開された情報をもとに知識を蓄えることは重要ですが、その上で、「ぐぐっても出てこない」オリジナルの知識を得ることが必要なのです。そのためには非常に泥くさく、そして「回り道」をさすらうようにして積み重ねる作業が不可欠なのです。

なお、リサーチの重要さについては、以前、twitterでつぶやいた内容を、ゼミ生の一人がまとめてくれました。そちらをぜひ参考にしてください。

http://togetter.com/li/196804

2016・2017年度、当ゼミではユース・サブカルチャーズとメディアの関係を題材に演習を進めてきました。なかでもメディアとしての雑誌の機能に注目し、「雑誌を研究する」「雑誌で研究する」ことを目指してきました。2018年度以降はこの方向性をさらに拡張し、メディア史にもとづく情報環境の〈いま・ここ〉の研究を進めました。2020年度には、メディア史的なテーマのなかでも放送と雑誌が果たした役割に注目しました。2021年度には2020年度の方向性を踏まえながらも広告を重点分野にしました。2022年度つまり現在進行しているゼミでは「モバイル前夜」を重点分野にしています。そして......

2023年度の重点分野は「雑誌の歴史&映像メディアの歴史」です。

今日すでに雑誌は「終わったメディア」とみなされておりますし、映画館の観客動員数は全盛期とは比較にならない少なさ、テレビドラマの視聴率も最盛期の何分の一というありさまです。かつて朝ドラの視聴率は50%近くあったのが、最近の作品は20%に届きません。にもかかわらず、なぜいまさら雑誌の歴史と映像メディアの歴史を重点的に学ぼうとするのか? それは、現在みなさんがネットで行っている情報収集は、そもそもかつて雑誌が果たしてきた役割であり、映画館に行ったりテレビを観るかわりに、サブスクでドラマを観たりYouTubeでおもしろい動画を楽しんでいるわけで、映像消費が衰退したわけではないから、なのです。つまり、雑誌と映像メディアはメディア環境の変化を最もわかりやすい形で示しているのです。みなさんに現在のメディア環境のどこが新しく、どこが画期的なのかはわかりづらいはずです。それはみなさんにとって、ごく普通の状況だからです。しかし、そこにいたるまでにはメディア史的に根本的な変化があります。現在の環境は「ある日、突然」出現したのではありません。〈いま・ここ〉に至るさまざまな水脈が合流した結果なのです。2023年度の重点分野は、雑誌・映画・テレビ放送の機能の変遷に注目します。現在に至る変遷を理解してはじめて、〈いま・ここ〉のメディア史的な位置づけを理解し、〈これから・どこ〉を考察できるようになるはずです。

かつての当ゼミでは、かなり幅広いテーマから題材を集めてリサーチの実務を進めておりましたが、2016年度以降は、メディア史というテーマにこだわりをもった活動をするようにしています。「メディア史を通じて何を理解したいのか?」という問を、みなさんのなかでよくよく自問してみてください。

学生がリサーチの実務を学ぶうえで、これが最も取り組みやすく、かつ情コミ学生として状況を十分に把握すべきテーマであると考えました。このようなことに関心を持ち、自分の身近な出来事をリサーチし、自分なりの発見をしてみたいと思う学生を歓迎します。

かなり欲張った目標を掲げるゼミですので、日ごろの活動は相当ハードです。3年ゼミに関しては、5科目分ぐらいの負担があると思ってください。どのぐらいハードなのかは、このサイトで公開している活動記録を読めばわかると思います。回によっては5時間以上も演習をおこなう日もあります。無駄に時間をついやすつもりは毛頭ありませんが、ある程度の量をこなすには、どうしても相応の時間が必要なのです。当然、向き不向きがありますので、ゼミ活動に対する自分のニーズと適合するかどうかを十分に検討してください。

ハードな内容にするのには二つの理由があります。
第一に、情コミ学生の多くは3年生になると学習モチベーションが上がります。キャンパスが変わって(といっても、2020年度はキャンパスに立ち入れない日々でしたが...)気分が一新される。それ以上に、1・2年生のうちは高校の延長のような科目が多かったのに対し、3年になると専門科目が中心になることが大きいように思います。専門科目に接することで大学生の「気分」を実感できることは事実でしょう。モチベーションが高いうちに、がんがん鍛えた方が効果的に決まっています。ですから、3年ゼミでは欲張れるだけ欲張ろうと考えているわけです。

第二に、就活の問題があります。4年生の春学期は否応なく学生は就活に時間を取られてしまいます。そういう状態ではゼミ活動をスムーズに進められません。ならば、その分を3年生のうちにやっておいたほうが合理的でしょう。それは同時に、就活前に自分の強みや関心を再確認することにもつながります。要するに当ゼミは、本来なら2年間かけてやるべきことを、3年生のうちにやってしまおうとしているわけです。ちなみに、4年ゼミは学生の自主的活動の時間としております。

以上が当ゼミの基本的な考え方です。メディアの基礎をしっかりと学びたい、リサーチ実務を習得することを通じて自分の「ひきだし」を増やしたい人は、ぜひ挑戦してください。こだわりを持ってなにかに打ち込むことが好きな人は大歓迎です。

ゼミの日常的な活動はほとんどがグループワークです。そのため、当ゼミではいろいろなタイプの学生に集まってもらいたいと考えております。リーダーシップのある学生も歓迎しますが、全員がリーダーである必要はありません。聞き上手な人、裏方仕事が苦でない人、渉外が得意な人、いろいろなキャラクターで形成されたチームを編成したいと考えています。実際、コミュニケーションが苦手なメンバーが加わることで、むしろ全体の結束力が高まることがあります。当ゼミの活動で重要なことは、「お互いに長所を活かしながら、メディア史の勉強をしたい」という「あなた」自身の意欲です。

ゼミ活動を進めるにあたり、かならず了解しておいてほしいことがあります。

1)Slack を連絡用プラットフォームに用いる。
2)場合によってはゼミの終了が20時過ぎになっても問題がない。
3)夏のゼミ合宿(メディア研究インカレ原村2023)が実施されるときは参加する。

ただし、部活の都合により、たとえば月に一度は4限終了後に帰らねばならない、というようなケースにも柔軟に対応しております。不都合があれば遠慮なく相談に来てください。

従来のゼミ合宿は長野県の原村で実施しておりました。当ゼミの夏合宿はインカレ形式のメディア研究会(2019年度は5大学から89名が参加)であり、ゼミ活動の重要な要素となっています。2020年度は新型コロナウイルス対策のため原村での実施は中止しましたが、そのかわりに3大学4ゼミの68名で Zoom によるワークショップを実施しました。2021年度も残念ながら実施できませんでしたが、そのかわり11月にゼミ内のプレゼン大会を実施しました。広告代理店やアニメ企画制作会社で活躍するゼミ卒業生たちに審査員をお願いしました。2022年度も合宿は断念しました。そのかわりのイベントは現在計画中です。2023年度はぜひとも復活させたいと考えています。

以上