2023年度問題分析ゼミ第1回の議事録です。
日時:2023年4月18日(火)15:20-18:50
会場:リバティータワー1141教室
参加者:19名
江下、許田G(4名)、阿部G(5名)、内山G(5名)、福井G(5名)
欠席者:1名
遅刻者:1名
早退者:0名
1 グループ発表
(1)阿部グループ
・発表者:阿部
・課題本:『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ_コンテンツ消費の現在形』(稲田豊史、光文社、2022)
・発表範囲:序章、第1章 「早送りする人たち 鑑賞から消費へ」
[概要]
序章
近年、映画の視聴方法は、作品の「鑑賞」することから、コンテンツとして「消費」することへと変わっていった。視聴者にとって映像作品がどういう存在かで、視聴態度は変化し、「消費」か「鑑賞」として観るかが決まる。
第1章
動画配信サービスの発達によって、作品を鑑賞する機会が増加するよりも、コンテンツを消費させる習慣が根付いた。また、私たちは作品によって鑑賞と情報収集の態度を使い分けている。近年、「観る」という体験よりも「観た」という情報が重要視されている。
〈質疑応答〉
質問1:間接的な表現ではなくて、直接的な表現が増加したとあるが、『鬼滅の刃』以外に具体的な例はあるか。
回答:『鬼滅の刃』以外の具体例は、本では記載されていない。
質問2:著者は倍速視聴を良いと思っているのか。
回答:作品を情報として観る場合は良いが、作品として鑑賞する場合は倍速視聴は良くないと考える立場である。
質問3:なぜ間接的な表現が減って、直接的な表現が増加したのか。
回答:本には記載されていない。
質問4:鑑賞モードと情報収集モードは、今はどちらが多いのか。
回答:サブスクリプションにより、だんだん消費モードが増えている。
〈補足事項〉
昔の映画は、音のないショート動画のようなものであり、複雑な物語は表現できなかった。そのため、映像の中にナレーションをいれるか、映像の横に解説者が立つことで、物語の内容を説明した。現在は、セリフや音のナレーションにより、時間軸を越えて表現できるようになった。また、昔はテレビで映画を流すことが多かった。そのため、年に百本の映画を観ることはさほど難しくなかった。これらを踏まえて、「サブスクリプションがある今はどうなっているのか」、「『みた』という情報に価値はあるのか」、「倍速で視聴することで、一年間あたりに観る映画本数は増えたのか」などのような点について疑問を抱き、考えるべきである。
(2)内山グループ
・発表者:菅井、西山
・課題本:『新版ハリウッド100年史講義 夢の工場から夢の王国へ』(北野圭介著、平凡社、2017)
・発表範囲:序章、第1章 「ハリウッド誕生」
[概要]
序章
現実をあるがままに写し撮り、そのまま動く映像として映し出す光学装置が、個別に楽しむ箱型娯楽へと応用され、その後大人数で集い鑑賞する視覚文化へと展開された。映画は装置そのものと映し出された映像の見世物的な魅惑から、物語を「語る」装置へと向かい、未分化だった制作・上映・鑑賞が徐々に区分けされハリウッドの誕生へと導いた。
第1章
映画で観客を魅了できることに気づいたズーカー、フォックスは映画の産業構造を整え第一次世界大戦の影響も受けながらハリウッドの基礎を築いた。そして、グリフィスが映画作りの基本形をつくり、ヒット作を生むことでグリフィスの名とともにハリウッドの名をも世界に轟かした。古典的ハリウッドに見られるメロドラマ的要素を強く持つ映画から映画スターをも生む、ハリウッドが誕生した。
〈質疑応答〉
質問1:「時間的に大きな隔たりがある」とはどういうことか。
回答:映像を録画することができるようになった時期と、映画を再生することができるようになった時期が異なり、隔たりがあるという意味である。
質問2:映画の内容をどのような基準で審査したのか。
回答:本には詳しくは記載されていない。
質問3:映画になるまでの過程において、光学装置を発明した後、娯楽と融合する必要があったのはなぜか。
回答:「多くの人に見られるようになってこそ映画である」と筆者が定義しているため。
質問4:映画で観客を魅了することができることに気が付いた具体的なきっかけはあるか。
回答:おもちゃの汽車を見たことがきっかけである。
質問5:シーンとショットの区別とはなにか。
回答:本には詳しくは記載されていない。
〈補足事項〉
フィルムに連続的に撮影された写真を、映像として映すことは難しい。残像効果を残すためには、フィルムを一瞬止める必要があるが、この技術が難しかった。リュミエール兄弟は、ミシンを応用して、フィルムを一瞬止めることができる再生機を発明した。また映画史においては、エジソンはあまり良い人物として描かれない。エジソンは、映画における発明が全てうまくいかなかったため、他のだれが何をやっても自身が儲けることができるような仕組みを作り上げ、関連特許で儲けた。
(3)福井グループ
・発表者:伊藤、竹内
・課題本:『ビデオランド レンタルビデオともうひとつのアメリカ映画史』(著ダニエル・ハーバード、作品社、2021)
・発表範囲:第1章 「長い物語」
[概要]
レンタルビデオ業界は1980年代から90年代にかけてアメリカ人の一つの生活習慣となるまでに拡大した。しかしながら、DVDやオンライン・ストリーミング型サービスの登場により、「レンタルビデオ」は時代錯誤のものになっていった。
〈質疑応答〉
質問1:再生する機械は、各家庭にどれくらいの値段のものがあったのか。
回答:具体的な値段は書いていないが、家庭に普及されたと記載されている。
質問2:時間的制約はどれくらいか。
回答:具体的な数字は書いていないが、例えば、金曜ロードショーにおいて、コマーシャルが入ったり、前後の番組があったりすることで、作品の一部が削られてしまうことが時間的制約の例である。
質問3:「メディア自体が物質的なものである」とは具体的にどういうことか。
回答:パソコンなど、メディアという媒体自体が物質的である。
〈補足事項〉
ロングテールとは、よく売れる商品の売上よりも、少しずつしか売れない商品の売上を合計した金額の方が上回ることがあるという考え方である。典型的な例は、Amazonである。また、レンタル用のサービスの普及の流れについても説明があった。昔のアメリカの一般家庭では、週末に夫婦で映画館に行って映画を観る文化があった。しかしながら、治安の悪い地域では映画館に足を運ぶことができなかった。そのため、他の国よりも早くレンタルサービスが普及した。日本においては、ビデオテープが誕生したばかりの頃は、ビデオテープの値段が高かったので、レンタルサービスが普及した。初めは無認可で行われていたが、レンタルサービス市場が大きくなるにつれて、ビデオテープ会社もレンタルサービス市場に目をつけ、レンタルサービスがより普及していった。
(4)許田グループ
・発表者:許田
・課題本:『興行師たちの映画史』(柳下毅一郎著、青土社、2003)
・発表範囲:第1章 「自粛警察と新自由主義」、第2章 「エキゾチズムと偽ドキュメンタリー」
[概要]
第1章
リュミエールとメリエスの時代は、多くの金を得ようと観客の興味を重視した。利益を追求し、観客の好奇心を搾取する映画をエクスプロイテーション映画という。また当時、映画産業は確立されておらず、監督・興行師・俳優は三位一体であった。
第2章
観客は見たことがないものが見たいため、映画人はそれに応えてきた。世界各地の映像を流し、観客のエキゾチシズムを刺激した。フラハティーは数々のドキュメンタリー映画を製作した。当時ドキュメンタリーという概念はなかったため、作為があっても観客には気にされなかった。クーパーとショートザックはモンスター映画のジャンルを成立させる。ヤコペッティはモンド映画を製作し、蛮習だけでなく文明も嘲笑の対象にした。
〈質疑応答〉
質問1:リュミエールとメリエスが没落していった原因や、それに関する筆者の考えはあるか。
回答:リュミエールとメリエスは全てを自分たちで行おうと考え、産業化していかなかったため、没落した。
質問2:「エクスプロイテーション映画は見せられないところを隠して観客に想像させるハリウッド映画とは異なり、すべてをさらけ出して見せる」とあるが、なぜそのような違いが生まれるのか。
回答:エクスプロイテーション映画は、ハリウッド映画に比べ制限がないため、ハリウッド映画には行うことができないような自由な表現をした。
質問3:教育映画であるのに、商業的な価値が見いだされたのはなぜか。
回答:教育映画という観点よりも、世間に広めたいという思いから作成した作品が、たまたまヒットして利益が出たということである。
〈補足事項〉
映画ビジネスと映像作成には、違う人物が関与し、貢献している場合が多い。また、ドキュメンタリー映画が、モンスター映画の原型になっている。
2 反省
初めての発表であったため、戸惑うことも多かった。発表する際は、自身の言葉に言い換えて伝えることも重要である。また、質問に対する答えがわからない場合や本に記載されていない場合は、適当なことを言わずにその旨を答えるべきである。
作成:内山
編集:阿部