個別ガイダンスやガイダンス動画では説明しきれないこともありますので、概要を紹介しておきます。ゼミ・シラバスとあわせて参考にしてください。なお、概要といってもわりと長文です......
江下のX(旧twitter)アカウントやゼミのInstagramアカウントもあります。質問があれば気軽に尋ねてみてください。
ゼミの目標は「30歳に向けた土台づくり」です。
社会人の多くは30歳前後になると「学生時代にもっと勉強しておけばよかった」と悔やみます。社会人になってから日々学ばねばならないことは学生時代よりもはるかに多いからです。そして、社会人になってから「学生時代にもっと勉強を」と思うことのほとんどは一般教養と基礎的な専門知識に属するものです。実社会では日常的に現実の仕事に取り組むのですから、学生時代に座学で学ぶ「実務的知識」などは一ヶ月程度で消化してしまうでしょう。だからこそ、物事を考えるための基礎力の不足を痛感するのです。
当ゼミではリサーチの実務を重視します。何を数値データかすべきを考え、面倒なことでもデータ化し、調べるべき資料を調べ、基本文献や論文を通じて学んだ原理や法則を用い、さまざまな情報を関連づける。「現場」の観察を通じ、身近な現象からさまざまな「徴候」をデータ化し、分析をもとにして提案に結びつける。リサーチをするうえで、ごくあたりまえのことを地道に積み重ねようと考えています。
2025年度の重点分野は今年度とおなじく「メディアをデータサイエンスする」です。
「データサイエンスする」とは、分析ツールを使ってデータを作成し、かつ処理することを通じ、日常的な「発見」「気づき」を言語化することです。なぜメディア研究でデータサイエンスなのか? メディアを理解するには、メディアがどう使われているのかを把握しなければなりません。マスメディアと電話がメディアの主役だった時代は、テレビの視聴率、CDの販売枚数、電話の通話時間等を細かく調べれば、メディアの利用状況はかなり把握できました。ところがご存じのとおり、時代はすでにネットとスマホが主役です。音楽の流行はCDの売れ行きではわかりません。SpotifyやYouTubeでの再生回数や「いいね」の数、SNSでのトレンドの方がむしろ流行の現在形を伝えてくれます。
では、どうすれば再生回数や「いいね」の状況を把握できるのでしょうか? じつは我々がネットを利用すると、その「痕跡」がネットに残ります。それが蓄積されてビッグデータとなります。そして多くのビッグデータは一定の手続きを踏まえればアクセスでき、データ解析ができるのです。どのような解析が実際にできるのかを知りたい人は、「こちら徒然研究室(仮称)」というサイトを見てみてください。ここは広告代理店でリサーチの仕事をしている江下の知人が個人的に運営しているサイトです。
https://note.com/tsurezure_cat/
メディアで起きている現象を理解するには、もはやデータサイエンスは不可欠なツールとなりつつあります。もちろん、ツールは数字を出してくれるだけですので、その意味を解釈するにはメディアや消費行動の基礎的な理論を知っておく必要があります。当ゼミでは、従来の基礎理論を習得に加え、変化や徴候を数字で説明するためにデータサイエンスの手法を身につけるようにしたいと思います。これが「データサイエンスする」の意味です。
では、データサイエンスの手法とは? それはプログラミングを学ぶこととイコールではありません。もちろん近年のデータサイエンスではPythonという言語が頻繁に用いられており、これを習得できれば非常に強力な手段を身につけたことになります。また、Python自体は比較的学びやすい言語です。しかし、データ解析はExcelでもできることはいくらでもあります。そもそもPythonもExcelもツールにすぎません。重要なことは、リサーチでは数値データを加工することが不可欠であることを体得し、なにかの問題解決の際に、どういう数値データを作る必要があるかを考えることです。そして、出てきたデータをちゃんと解釈できることです。データの解釈はプログラミングでは学べません。
もちろんなかには「せっかくデータサイエンスをやるのならPythonを多少使えるようになりたい」と考える人もいるでしょう。グループワークを進めるうえで、一人ぐらいは強力なツールを使えるメンバーがいたほうが効果的であることは間違いありません。そこで当ゼミでは、2023年度からゼミの時間帯とは別に「データサイエンス勉強会」を実施しています。これは「Pythonを学びたい」と希望するゼミ生が自主参加する講習会です。ここで使っているテキストは希望者に提供しています。
みなさんは、なぜプログラミングを学ぶことが難しいと思いますか? ひとつの答えは、プログラミングを日常的に使わないからです。座学で覚えただけでは身につきません。使い続けてはじめて身につくのです。
データサイエンスのツールもおなじです。理論やツールの使い方を覚えたところで、使わなければ忘れてしまいます。だからこそ、本当に重要なのはリサーチをし続けることなのです。データサイエンスは手段にすぎません。だからこそ当ゼミはリサーチの実践がメインなのであって、データサイエンスはそのための手法という位置づけであることを強調しています。
3年生になれば否応なく就活を意識することでしょう。インターンシップに振り回されることになるかもしれません。しかし、就活で最も重要なことは、リサーチを通じ、ぐぐっても出てこないオリジナルの知識を一つでも獲得することです。これこそが「自分らしさ」「自分の強み」となるのです。ネットで簡単に検索できてしまう程度の知見に、たいした付加価値はありません。本に載っていることも、すでに「周知」の事柄が大半です。もちろん公開された情報をもとに知識を蓄えることは重要ですが、その上で、「ぐぐっても出てこない」オリジナルの知識を得ることが必要なのです。そのためには非常に泥くさく、そして「回り道」をさすらうようにして積み重ねる作業が不可欠なのです。
なお、リサーチの重要さについては、以前、twitterでつぶやいた内容を、ゼミ生の一人がまとめてくれました。そちらをぜひ参考にしてください。
かつての当ゼミでは、かなり幅広いテーマから題材を集めてリサーチの実務を進めておりましたが、2016年度以降は、メディア史というテーマにこだわりをもった活動をするようにしています。そして今年度より、そこにデータサイエンスという手法を結びつけました。学生がリサーチの実務を学ぶうえで、これが最も取り組みやすく、かつ情コミ学生として状況を十分に把握すべきテーマであると考えました。このようなことに関心を持ち、自分の身近な出来事をリサーチし、自分なりの発見をしてみたいと思う学生を歓迎します。
かなり欲張った目標を掲げるゼミですので、日ごろの活動はハードです。3年ゼミに関しては、4科目分ぐらいの負担があると思ってください。どのぐらいハードなのかは、このサイトで公開している活動記録を読めばわかると思います。回によっては5時間以上も演習をおこなう日もあります。無駄に時間をついやすつもりは毛頭ありませんが、ある程度の量をこなすには、どうしても相応の時間が必要なのです。当然、向き不向きがありますので、ゼミ活動に対する自分のニーズと適合するかどうかを十分に検討してください。
ハードな内容にするのには二つの理由があります。
第一に、情コミ学生の多くは3年生になると学習モチベーションが上がります。キャンパスが変わって(といっても、2020年度はキャンパスに立ち入れない日々でしたが...)気分が一新される。それ以上に、1・2年生のうちは高校の延長のような科目が多かったのに対し、3年になると専門科目が中心になることが大きいように思います。専門科目に接することで大学生の「気分」を実感できることは事実でしょう。モチベーションが高いうちに、がんがん鍛えた方が効果的に決まっています。ですから、3年ゼミでは欲張れるだけ欲張ろうと考えているわけです。
第二に、就活の問題があります。3年生の夏休みはインターンシップに、4年生の春学期は否応なく学生は就活に時間を取られてしまいます。そういうことを前提にしたゼミ活動を進めねばなりません。ならば、その分を3年生、とりわけ春学期のうちにやっておいたほうが合理的でしょう。それは同時に、就活前に自分の強みや関心を再確認することにもつながります。要するに当ゼミは、本来なら2年間かけてやるべきことを、3年生のうちにやってしまおうとしているわけです。ちなみに、4年ゼミは学生の自主的活動の時間としております。
以上が当ゼミの基本的な考え方です。データサイエンスということの実践を学んでメディアの基礎をしっかりと理解したい、リサーチ実務を習得することを通じて自分の「ひきだし」を増やしたい人は、ぜひ挑戦してください。こだわりを持ってなにかに打ち込むことが好きな人は大歓迎です。
ゼミの日常的な活動はほとんどがグループワークです。そのため、当ゼミではいろいろなタイプの学生に集まってもらいたいと考えております。リーダーシップのある学生も歓迎しますが、全員がリーダーである必要はありません。聞き上手な人、裏方仕事が苦でない人、渉外が得意な人、いろいろなキャラクターで形成されたチームを編成したいと考えています。実際、コミュニケーションが苦手なメンバーが加わることで、むしろ全体の結束力が高まることがあります。当ゼミの活動で重要なことは、「お互いに長所を活かしながら、メディアとデータサイエンスの勉強をしたい」という「あなた」自身の意欲です。
ゼミ活動を進めるにあたり、かならず了解しておいてほしいことがあります。
1)Slack を連絡用プラットフォームに用いる。
2)場合によってはゼミの終了が20時過ぎになっても問題がない。
3)夏のゼミ合宿(メディア研究インカレ原村2025)が実施されるときは参加する。
ただし、部活の都合により、たとえば月に一度は4限終了後に帰らねばならない、というようなケースにも柔軟に対応しております。不都合があれば遠慮なく相談に来てください。
従来のゼミ合宿は長野県の原村で実施しておりました。当ゼミの夏合宿はインカレ形式のメディア研究会(2019年度は5大学から89名が参加)であり、ゼミ活動の重要な要素となっています。2020年度は新型コロナウイルス対策のため原村での実施は中止しましたが、そのかわりに3大学4ゼミの68名で Zoom によるワークショップを実施しました。2021年度・2022年度も残念ながら実施できませんでしたが、そのかわり11月にゼミ内のプレゼン大会を実施しました。広告代理店やアニメ企画制作会社で活躍するゼミ卒業生たちに審査員をお願いしました。そして2023年度は2大学2ゼミの規模でなんとか復活できました。2024年度の規模は未定ですが、引き続き実施したいと考えています。
以上